販売促進支援部 代表取締役 小河原大輔
2011年にショウビに加わり、企画デザイン部(現・販売促進支援部)を立ち上げる。2023年に代表取締役へ就任。現在は、企業や商品のコミュニケーションツールを起点に、一貫したブランド戦略の設計と実行を担い、「企業や商品の魅力を、どうカタチにして届けるか」を軸に支援している。
印刷・プロモーション・システム。一見すると異なる三つの事業を展開するショウビは、どのように今の形へと広がってきたのか。2011年に入社し、企画デザイン部(現・販売促進支援部)の立ち上げを経て、2023年に代表取締役へ就任した小河原社長。その歩みは、決して一直線ではありませんでした。夢と経営のバランス、事業の位置づけ、組織や社名の意味――会社として何を大切にするのかを、何度も立ち止まって考えてきました。
「自分たちは、何の会社なのか」
「ショウビの価値とは何か」
その問いを重ねる中で、三つの事業を貫く考え方として見えてきたのが、“ワクワクのつくり手”というコンセプトです。
本インタビューでは、これまでの判断や迷いを振り返りながら、ショウビが大切にしている価値観、三つの事業が一つの思想へとつながっていった背景、そしてこれから目指す未来について、お話いただきました。
代表取締役としての現在

2011年にショウビへ加わり、企画デザイン部、現在の販売促進支援部を立ち上げました。2023年には代表取締役に就任し、現在は経営を担いながら、販売促進支援部ではクリエイティブディレクターも務めています。
営業、プロデューサー、ディレクターを兼ねるかたちで、お客様の最初のご相談を受けるところから、外部パートナーのアサインまで含め、「想いをカタチにする」プロセスを最後まで見届けるのが、私の役割。振り返ると、これまではとにかく走り続けてきた、という感覚が強いですね。これからは、私と同じような動きができる人材を少しずつ育てながら、経営者として全体を指揮する立場へとシフトしていきたいと考えています。とはいえ、プレイヤーとしてお客様と一緒に考え、つくっていく時間が好きなのも事実です。現場から完全に離れてしまうのは、私らしくないとも思っています。経営と現場、そのバランスを模索しながら、今後のあり方を考えているところです。
クリエイティブの原点は「らくがき」
両親も妹も理系。そんな家系のなかで、私だけ文系。昔から美術館や博物館が好きで、特に考古学系の展示がすきです。象形文字や遺跡、出土品の“造形”に強く惹かれました。「なぜこの形を選んだのか?」と考えることが、面白くて。それも影響してか、自作フォントをつくったり、絵を描いたり、するのが好きです。趣味「らくがき」なんですが…。自然とデザインの世界に触れるようになったんです。
幼少期から、割と何でもできてしまうタイプで、何かができなくて苦労するってことが無くて。そんな中、“デザインは答えが一つではない領域”。私自身の限界に挑戦できる領域であり、その曖昧さ、自由さに強く魅かれたんだと思います。様々な選択肢がある中で、クリエイティブの領域に進みたいと強く思うようになりました。
「できるかどうか」より、「どう実現するか」

クリエイティブな世界を目指し広告代理店へ
大学卒業後は、デザイナーではなく、ディレクターとして広告代理店に入りました。美大を出ていたわけでもありませんし、自分が“すごいデザインを生み出す人”になる姿は、当時あまり想像できなかったんですよね。
一方で、人をまとめたり、アイデアを出したり、作り手と一緒に考えたりすることは、昔から苦にならなかった。そういう立場でなら、デザインやクリエイティブの世界でも価値を出していけるかもしれない。そんなふうに思ったんです。
「どう実現するか」を考える仕事が性に合っていた
代理店での仕事は、自分にとても合っていました。代理店の役割って、「できるかどうか」を判断することではなく、「どう実現するか」を考えることなんです。制約の中で、どう組み立てるか。誰と組めばできるのか。そうやって形にしていくプロセスが、自然と自分の中に染みついていきました。
先代が築いた歴史と、「負けたくない」という想いが、企画デザイン部を生んだ
ショウビに入社してから印象的だったのは、お客様との関係深さでした。お客様を招いての食事会などが定期的にあり、先代たちのお客様とのお付き合いの深さには本当に驚かさせられました。印刷工場はともすると下請けという位置になるのですが、クライアントから頼られるパートナーとして認められている感じがしました。
作るだけでなく、作るものの相談をされる関係が、自分が代理店でやってきたことと同じだなと感じたのを覚えています。と同時に、この先代たちに、負けたくないという思いもあって、印刷部でもなくシステム部でもなく企画デザイン部を立ち上げました。自分の顧客を作って、2部門より売り上げを伸ばしたいという思いでした。
気づいたら、事業が広がっていた
代理店時代に学んだことや、自分自身のスタンスが、自然と活きていきました。
もちろん、自社でできないことは断る、という選択もあると思います。でも、それは自分らしくないし、私の場合、どう実現するかを考えるほうが、いつも先に立つんです。それで、実際にやってみると、「意外とできる」。最初から「事業を広げよう」という明確なゴールがあったわけではありません。お客様のお困りごとに一つひとつ応えていくうちに、気づいたら、できることが増えていたって感じです。
結果として、ショウビの事業の幅が、少しずつ広がっていきました。
松美システムからSHOBI(ショウビ)へ、社名変更の理由

事業の実態に、名前が追いつかなくなった
そうしてショウビは、印刷・企画デザイン・システムという、三つの事業を持つ会社へと成長していきました。ただ、その頃はまだ社名が「松美システム」のままで、会社の実態と、提供しているサービスとの間に、少しずつズレが生まれていたんです。
「自社の価値が、正しく伝わっていない」
そう感じる場面が、増えてきました。
システム事業を軸にした社名は、システムの成長期には合っていました。でも時代が変わり、仕事の中心も、印刷やデザイン、さらに販促支援へと広がっていく中で、「松美システム」という名前だけでは、何をしている会社なのかが伝わりにくくなっていたんです。
私自身、初対面の人に自社をどう説明するか、困る場面も多くなっていました。
事業の広がりに正直な名前へ
社名は、会社の“顔”です。お客様にとっても、社員にとっても、「自分たちは何者なのか」を示すものだと思っています。だからこそ、事業の広がりとズレのない名前に変える必要があると感じました。
印刷も、デザインも、システムも含めて、自分たちの仕事をきちんと表せる名前は何だろう。そう考えた結果、たどり着いたのが「SHOBI(ショウビ)」でした。
松美堂という原点を大切にしながらも、余白を感じさせる名前。社名変更により、自社をひとつの軸で捉え直すことができるようになりました。
三つの事業をどう束ねるか代表就任後、いちばん悩んだテーマ
3つの部署の位置づけに悩む日々
代表に就任してから、一番悩んだのが、この三つの事業をどう位置づけるか、ということでした。特にシステムの位置づけが、大きな悩みの種でした。印刷とデザインは、感覚的にも近い。でも、システムだけは、どうしても距離があるように感じていました。
「本当に、このまま全部続ける意味があるのか?」
正直、何度も考えました。
システム部のリーダーである鈴木自身が、「システムって、本当にショウビに必要?」と口にしたこともありました。
売上としては、間違いなく会社を支えている。でも、気持ちの部分が噛み合っていない。経営者として、それを放置するわけにはいきませんでした。
見えてきた、もう一つのズレ
加えて、企画デザイン部にも、別の課題がありました。
実際には、プロモーション領域全体の戦略立案から、運営まで担うようになっていましたが、「企画・デザイン部」という名称から、単に企画やデザインをつくる部署だと思われることが多かったんです。そのギャップが、お客様に誤解を与えてしまう場面も、少なくありませんでした。
事業そのものは広がっているのに、言葉や位置づけが追いついていない。そんな違和感が、社内外のあちこちにあったんです。
ショウビの価値とは?どの仕事も、根っこは同じだと気づいた瞬間
社員全員で話し合って見えた共通点
そこで、社員ととことん話し合う時間をつくりました。正解が見えないまま、とにかく言葉にしてみる。一時は、「システムをたたむ」という選択肢にまで話が及びました。それくらい本気で、あらゆる可能性を考えたんです。そんな対話を重ねる中で、ある共通点が見えてきました。
印刷も、デザインも、システムも。やっていることは違って見えるけれど、実は全部、「お客様の想いを汲み取って、カタチにする」という点では同じなんじゃないか、と。そして、その根っこには、共通して「ワクワク」がある。この気づきは、私だけでなく、社員にとっても大きなものだったと思います。
システム、デザイン、印刷。それ自体に価値があるのではなく、それらはすべて、私たちの価値を届けるための“手段”だった。そう捉え直したことで、企画デザイン部がプロモーション領域へと広がっていった流れにも、自然と必然性を感じられるようになりました。
軸が定まったことで、見えてきた整理の方向性
共通する軸が見えたことで、事業全体を貫く考え方が、はっきりし、それぞれの事業を、バラバラではなく、ひとつの流れとして捉え直せるようになりました。その流れの中で、企画・デザイン部も「販売促進支援部」へと名称を変更することに決めました。自分たちが何を提供しているのかを、社外だけでなく、社内でも、より正しく理解してもらえるようになったと思っています。三つの事業は、別々のものではなく、同じ起点から生まれた、違う手段だった。そう理解できたことで、ようやく会社としての方向性が定まった。今、そんな実感があります。
ブランドコンセプト「ワクワクのつくり手」

“ワクワクのつくり手”が示す、ショウビの姿
コンセプトを決める議論の中で、鈴木が「ワクワクのつくり手、でいいんじゃない?」と言ったんです。その瞬間、全員がすっと腹落ちました。
私たちは“つくることが好き”な集団です。何かを生み出す過程そのものにワクワクを感じます。「どんな会社でありたいか」という問いに対しても、「つくり手であり続けたい」という想いで満場一致でした。そして次に見えたのは、そのワクワクをもっと多くの人にも届けたいという願い。
つくるワクワク、とどけるワクワク、つかうワクワク。モノを通して広がるこの“感情体験”こそ、ショウビが実現したい姿。
そこを目指していくのに、「ワクワクのつくり手」というシンプルな言葉は、ピッタリだと思いました。
SHOBIDO WAKUWAKU LAB(松美堂ワクワクラボ)設立について

ワクワクラボは「正解のない実験場」
ワクワクラボをつくった一番の理由は、クライアントワークとは別に、社員が試せる場所、考えられる場所が必要だと、強く感じたからです。私自身が、仕事を通じてワクワクしてきたように、社員のみんなにも、仕事そのものをワクワクしながらやってほしい。そんな想いは、ずっと前から持っていました。実際、研究所のような場所をつくりたい、という構想自体は、かなり前からあったんです。
ただ、「つくっただけ」になってしまわないか、本当に機能するのか。正直なところ、なかなか確信が持てませんでした。でも、社員のみんなの想いを聞いて、「あ、これはいけるかもしれない」と思えたんです。
日々の仕事は、お客様の要望にきちんと応えることが最優先になります。当然、「正解」に向かっていく仕事が中心になりますし、失敗はできません。でも、それだけを続けていると、技術を伸ばしたり、新しい発想を試したりする余白が、どうしてもなくなっていく。それは、社員の成長やモチベーションという意味でも、長い目で見たときの会社の存続という意味でも、少し危うさを感じるようになっていました。
正直に言うと、ワクワクラボの完成形は、まだ見えていません。でも、それでいいと思っています。この場所自体が、いまも試行錯誤の途中にある。そのプロセスこそが、いまのショウビにとって必要なものだと感じています。
松美堂活版印刷所について

活版印刷に、あえて「こだわる」と決めた理由ーー原点を手放さない、という経営判断
ショウビは、活版印刷会社「松美堂」として創業した会社です。活版は、ショウビの原点。ここがなければ、今のショウビはありません。一方で、世の中はどんどんデジタル化が進み、印刷のニーズ自体は確実に減ってきています。活版印刷に関して言えば、辞めていく会社も多く、「できる会社が少なくなっている」というのが現実です。そんな流れの中で、「じゃあ、うちはどうするのか?」という判断を迫られました。
効率や売上だけを考えれば、活版から手を引く、という選択肢もあったと思います。でも、考えれば考えるほど、「それで本当にショウビらしいのか?」という違和感が残ったんです。うちの強みは何か、と考えたとき、やっぱり行き着いたのは活版でした。ショウビの原点でもあり、今となっては、簡単に真似できる技術でもありません。だったら、あえて活版にこだわる。残すだけでなく、きちんと価値として育てていく。そう考えて、「松美堂活版印刷所」という屋号を設け、独立した部門として、他の印刷と区別することにしました。
プラテン導入は、正直「簡単な判断」ではなかったーー売上に直結しない投資への葛藤

ドイツ製のプラテンを導入するという決断も、もちろん簡単なものではありませんでした。正直、社内でも「無駄な投資なんじゃないか」「また社長が何か始めたぞ」と思われていたと思います(笑)売上にすぐつながる話でもありませんし、経営者としては、かなり悩みました。ただ、長年積み上げてきた活版の技術を、もっと活かせる余地があると感じていたのも事実です。プラテンは扱いが難しい機械ですが、だからこそ、これまでの経験や技術が活きる。「これをきちんと使いこなせるようになれば、松美堂活版印刷所として、一段上の表現ができる」そう思えたんです。
一番のハードルは、「人」だった。ーー技術よりも難しい、巻き込み方

ただ、機械を入れれば終わり、という話ではありません。一番大変だったのは、人の部分でした。会長は新しいことに挑戦するのが好きなタイプなので、比較的前向きでした。一方で、田辺は、正直、最初はかなり慎重でした。将来を担っていく存在だからこそ、無理やり引っ張るわけにもいかない。どうやって本気で向き合ってもらうか。そこは本当に悩みました。でも、時間をかけて向き合い、試行錯誤を重ねる中で、少しずつ、彼自身の中でスイッチが入っていった。今では、会長以上にプラテンを扱いこなしていますし、以前とは比べものにならないくらい、活版だけでなく、印刷全体の仕事に情熱を注いでいるのが分かります。その姿を見たとき、「ああ、簡単じゃなかったけど、やってよかったな」と、ようやく腹の底から思えました。
売上は小さい。でも、意味は大きいーー活版を“ブランド”として育てる覚悟

正直に言えば、活版印刷の売上は、まだ微々たるものです。効率も良いとは言えません。でも、どんどんなくなっていく技術だからこそ、残していること自体に価値が生まれる。そして、きちんと向き合えば、いずれ「選ばれる理由」になると感じています。将来的には、松美堂活版印刷所そのものを、一つのブランドとして確立したい。「活版といえば、松美堂活版印刷所」そう言われる存在を目指しています。正直、スタートしたばかりで、まだ未知数です。でも、松美の原点として残していく価値があるし、どこか使命感のようなものも感じています。それは、社員も同じだと思っています。だからこそ、短期的な成果を求めるのではなく、無理に広げず、大切に守りながら、時間をかけて未来につないでいきたい。そう考えています。
ワクワクする会社を目指して

紙やリアルの価値──モノと使い手のあいだに生まれるもの
紙はなくならないと思っています。むしろ、デジタルが進めば進むほど、紙の価値は際立っていく。実際、コロナ以降、リアルの強さを肌感覚で実感する場面に、何度も立ち会ってきました。手に取れるもの、場を共有すること、直接伝わる温度感。そういった価値は、簡単には代替できないと感じています。時代と逆行する考えかもしれませんが、私は、紙や印刷、そして「カタチあるもの」に、とことんこだわっていきたいと思っています。というのも、使い手の数だけ、そのものにオリジナルの価値が生まれると考えているんです。誰かの手に渡った瞬間、それは単なる「もの」ではなくなる。折り目がついたり、書き込みが増えたり、手の跡が残ったり。使われた時間や記憶が重なって、その人だけの存在になっていく。無くしたから新しいものを買えばいい、では置き換えられない価値です。そういう感覚に、どこか考古学にも通じるロマンを感じるんですよね。過去の人が残した痕跡を読み解くように、「この人は、どんなふうに使っていたんだろう」と想像できるもの。だからこそ、紙やリアルなものには、デジタルでは代替できない力があると思っています。

紙とデジタルの融合──ショウビらしい新しい価値を探して
一方で、ショウビには、システム開発というデジタルの力もあります。紙とデジタル。その両方を持っている会社は、実はそれほど多くありません。これまで通り、印刷とシステムを並走させる、という考え方もあります。でも今は、それらをただ横に並べるのではなく、融合させていきたいと考えています。正直に言うと、まだ明確な答えは見えていません。ただ、それぞれの部署の強みがはっきりし、「印刷・販売促進支援・システム」すべての事業を継続していくと決めた今、「何か、もっと面白いことができる」という感覚だけは、確かにあるんです。ショウビは、これまでも柔軟に変化しながら、その時々の得意を活かして、事業を広げてきた会社です。だからこそ、これからも既成概念にとらわれず、ワクワクに正直に、事業を進めていきたいと考えています。
「何をする会社か」より、「どんな価値を届ける会社か」
これまでショウビは、お客様によって、「システム屋さん」「制作会社さん」「印刷屋さん」そんなふうに、少しずつ違うイメージで捉えられてきました。でも、これからは、「何をやっている会社か」ではなく、「どんな価値を届けている会社か」その軸で、ショウビを知ってもらえる存在になりたいと思っています。最終的に、「ショウビって、面白いことやってるよね」「ショウビさんとの仕事はワクワクする」そう言ってもらえる、創造性あふれる会社にしていけるといいですね。
